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【日本の年金は世界最低レベル?】2019年版 世界年金指数ランキング結果に対する元銀行員の分析

2019年10月に米国の大手コンサルティング会社マーサーより、世界(グローバル)年金指数ランキングが発表されました。

 

 

ネットニュースを見て私はこのランキングを知りました。

37ヵ国中、日本が31位で順位が非常に悪かったという端的な内容が記載されていました。

 

ニュースでは、順位は悪いことはわかるけど、評価基準とかランキングの詳細等他国と比べて日本の年金のどんなところが評価されていないのか、があまり説明されていませんでした。

 

信託銀行で6年近く年金を専門にしてきた私としては調べないわけにはいかないですね。

 

ということで、今回は世界(グローバル)年金指数ランキング」の詳細調査及び分析を行ってみました。

 

 

目次

 

1.世界(グローバル)年金指数ランキングとは

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マーサーのホームページにて確認したところ、正式名称は、マーサー・メルボルン・グローバル年金指数(以下、「本指数」とする)と言い、米大手コンサルティング会社のマーサーとオーストラリアのメルボルンにあるナッシュ大学ビジネススクールの研究センターが、政府の支援を受け、共同で行っている研究プロジェクトのようです。

 

 

本指数は、各国年金制度を、「十分性(Adequancy)」、「持続性(Sustainability)」、「健全性(Integrity)」の3つ指標で得点付けし、その平均点でA~Eの5段階のランク分け及び順位付けを行うものとなっています。

 

各指標の評価基準は、

 

十分性(Adequancy)」:公的年金の支払いが老後の生活に十分なだけあるか、老後の生活資金が十分に貯蓄されているか、等、国民の老後生活に行われる定期的な給付の十分性を評価

 

・「持続性(Sustainability)」:年金を支払う環境が整っているか、平均寿命と支給開始年齢の関係は問題ないか、国家破綻のリスクはないか、等、国民への年金支給の持続性を評価

 

・「健全性(Integrity)」:年金制度を上手く運用するための見直し機能や透明性はあるか、私的年金のスキームは整っているか、等、政府と国民のコミュニケーション、ガバナンス体制の健全性を評価

 

となっており、これらを総合的に評価します。

公的年金だけではなく、私的年金の状況や国民の貯蓄状況も評価対象となっているんですね。私的年金とは、確定拠出年金のように企業や個人で積み立てをする制度です。

 

本年2019年からは、フィリピン、タイ、トルコの3か国が追加され、7ヵ国の退職制度を比較しています。

 

37ヵ国という数字は少なく感じるかもしれませんが、世界人口でいうとおおよそ3分の2となっており、カバー範囲は十分といえるのではないでしょうか。

 

なお、ランキングは毎年発表されており、2019年で11年目となっています。

 

2.日本の順位が低い理由(31/37位)

 

※ランキング表の確認

2019年の日本のスコアは以下の通りであり順位は31/37位となっています。

比較のために、ランキグ上位と下位の2ヵ国ずつと、順位が日本と前後(30位と32位)の国のスコアも含めて作成してみました。

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(マーサーホームページを参照して作成)

2-1.「十分性」、「持続性」、「健全性」の全てのスコアが低い

表を確認すると、日本は、十分性:54.6p(平均マイナス6p)、持続性:32.2p(平均マイナス18.2p)、健全性:60.8p(平均マイナス8.9p)と全ての項目でスコアが平均値を下回っており、制度全体が整っていないと評価されていることがわかります。

 

2-2 健全性は比較的高いが持続性が極端に低い

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項目別にみると日本の年金制度がどのように評価されているのか、特徴が見えてきます。

 

・健全性は比較的高い

平均値よりは低い日本の健全性スコアですが、日本より下位の国だけではなく、順位が1つ上で30位の中国よりも高いスコアと、ランキング下位グループの中では比較的高い評価がされていることがわかります。(【健全性スコア】31位日本:60.8p 30位中国:46.5p)

 

健全性は、政府のガバナンス体制の健全性、が評価されているんでしたよね。ちょっと難しいですけど、

ガバナンス評価とは、プロセス評価と思ってもらって良いと思います。

 

世間の反応はともかく、近年個人で積み立て及び運用を行う確定拠出型の年金の法改正やNISA制度の拡充、「老後2000万円問題」の金融庁報告書等、制度の拡充と情報発信は増えてきていると思われます。

こういった点が評価されたのではないでしょうか。

 

・持続性が極端に低い

日本の持続性スコアは、32.2pです。

これは日本より1つ順位の低い32位インドの44.9pよりも、12.7pも低いスコアです。

それだけではなく、36位アルゼンチン31.9pとも若干高いもののほぼ同スコア、37位タイ(最下位)38.8pよりも6.6p低いスコアとなっています。

 

 アルゼンチンは、国の財政状況がめちゃくちゃ悪くて、国が借金を返せなくなって通貨の価値が無になる、デフォルトという状況に陥る可能性まである国です。

日本の年金の持続性の評価がこのような国と同程度となっていることは、非常に驚きました。

 

持続性スコアが極端に低い理由は大きく2つあると推測されます。

 

①少子高齢化社会【持続性が低い理由】

日本の年金は賦課方式といって、我々が月々支払う国民年金等は、そのまま現在年金を貰っている高齢者のために使われます。

 

この制度は、世界でも類をみない少子高齢化社会へ突入しようとしている日本には、最も向きません。

 

年金を貰う人は増えるのに、年金を払う人は、減っていってしまうんですから、当然ですよね。

 

この点が評価の低い最大の要因でしょう。

 

ちなみに日本の平均寿命は最高を更新(男:81.25歳。女87.32歳※2018年時点)し続け、出生率は低下傾向(1.42※2018年時点)です。

出生率1.42では、夫婦(2人1組)から1.42人の子供しか生まれていないということなので、日本の人口は減り続けます。このままいけば100年もたたず、日本の人口は半分以下になってしまうと言われていますから、少し怖くなりますね。

 

 

②国の抱える多額の債務(借金)

【持続性が低い理由】

 

日本(国)の借金は、2019年3月末時点で1,100兆円程度であり、GDP比では世界最大の借金額といわれています。

 

アルゼンチン同様、この借金額も少なからず持続性への評価が悪くなった一因となっているでしょう。

 

ただし、日本はアルゼンチンとは違い対外債務(外国への借金)が非常に少なく、国内の企業・国民からの借金がほとんどです。

 

国内でやっているので、アルゼンチンのようにデフォルト陥る可能性は、ほとんどありません。

 

そういった点で、先ほどご説明した少子高齢化社会であることの方が、より持続性スコアの減点に影響していると推測します。

 

2-3.日本の年金が持続性を向上させるには

では、世界年金指数ランキングで、日本が健全性を向上させ、今後の日本の順位をあげていくには、どのような対策が考えられるでしょうか。

持続性指数の測定基準について、マーサーは以下のように説明しています。

 

持続性指数に寄与する測定基準においては、制度自体の変更が困難なものもあるが、制度の長期的有効性の向上に貢献出来得る変更が可能なものもある。すなわち、将来のための貯蓄水準の引き上げの奨励または義務化、年金支給年齢の暫時引き上げ、国民の勤続延長の実現または奨励等であり、これらは提言に含まれている。

(マーサーホームページより引用)

 

ここで注目すべきは、

 

・貯蓄水準の引き上げの奨励・義務化

・年金支給年齢の暫時引き上げ

・国民の勤続延長

 

制度長期的有効性の向上に貢献できるとして、評価されることです。

 

これにピンときた方もいると思います。

日本が行っている施策に合致します。

 

老後ための貯蓄の必要性を説いた「2,000万円問題」の金融庁報告、資金確報のための確定拠出年金やNISA制度の拡充といった貯蓄引き上げ策を近年積極的に行っています。

 

また、雇用を70歳まで延長し、それに伴い年金支給も70歳からにするという議論も進んでいますよね。

 

これらの施策が実現し浸透した時、日本の順位は上がるのかもしれません。

日本が足りていないのは、国民の理解を得られるコミュニケーションの取り方ではないでしょうか。

 

ランキング上位である国だからの年金額が多く、老後働かなくてはいいというわけではなく、現実に合った制度を政府が整え、国民が文句を言うだけでなく確りと制度を活用し老後の準備をしていっている国の順位が高いということでしょう。

 

ちなみに私は絶対に70歳まで働きたくなんかありませんが笑

 

3.日本の年金への評価、実は上がっていた!?

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過去5年間の日本のランキング結果をまとめてみると驚くべきことが見えてきました。

 

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(マーサーホームページを参照して作成)

 

評価母数の増加もあり順位は下がっているが、

2018年を境に十分性と健全性の評価が大きく向上している

ということです。

 

これは間違いなく確定拠出年金等個人で老後の積み立てをできる私的年金の制度拡充が、評価向上につながっています。

 

2018年の十分性と持続性スコアの改善には、2017年以降に実施された個人型確定拠出年金への加入者範囲拡充(専業主婦等今まで入れなかった方も含めほぼ全ての人が加入可能に)や積立NISA制度(従来の5年非課税だけでなく20年非課税の積立NISA制度が新設)の実施等が寄与しているでしょう。

 

やはり、国だけでなく世界のメッセージとして、

 

国だけに頼らず、国民が一人一人が責任を持って老後の準備を行おう

 

というのがあるのでしょう。

 

私のような老後まで時間のあるものには、ますます老後に向けたお金に対する情報収集力と行動力が必要な世の中になっていくと思われます。

 

4.まとめ

世界年金指数ランキングでは、各国の年金制度の「十分性」、「持続性」、「健全性」を評価(毎年実施され今年で11年目)

 

★日本は、「十分性」、「持続性」、「健全性」の全ての評価が低く31/37位

 

中でも「持続性」の評価は極端に低いが、過去と比較すると評価が上がってきている

 

★今後、私的年金(個人積立の年金)の拡充にて「持続性」をさらに向上すると推測

 

国民の各人の老後準備が必要な世の中に?

 

今回は、マーサーの世界年金指数ランキングを分析してみました。
 
日本の年金の持続性がアルゼンチン並みに低く評価されていることは驚きました。
 
余裕を持った人生を送るためにも、自分で稼ぎ生きる力を手に入れたいと強く思いました。
 
また、1つのデータに踊らされるのではなく、様々な知識をとり入れることができるようになりたいですね。
 
例えば、マーサーは私的年金である日本の各企業の確定給付企業年金(退職金と思っていただいて差し支えないです)のコンサルティングも行っており、各国の年金制度を私的することはマーサーにプラスになります。
また、政府としても年金問題は、社会保障費や 消費税を上げる理由になりますからね。
 
一度政府批判とは違った視点で年金について考えるのに、「「年金問題」は嘘ばかり、ダマされて損しないための必要知識」という私が銀行員時代に読んだ本が非常に良かったです。
 
年金問題への批判に対して、メスを入れた必見の一冊です。
年金に対して、漠然な不安を持つ方に、非常におすすめです。